| 私は日本語にうるさい。 |
| 愛読書は広辞苑だ。 |
| 誤った文法の表現や、伝統を無視した言葉の使い方には |
| 我慢ができない。 |
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| 最近、妙な話を聞いた。 |
| ファミレス言葉というものがある。と。 |
| ファミレスというのは、ファミリーレストランのことだ。 |
| 私は、このファミレスという言葉が嫌いだ。 |
| なぜ略す? |
| 正確にファミリーレストランと言うべきではないか。 |
| ファミリーレストランという言葉も、実は気に入らない。 |
| 別に外来語がいけないと言っている訳ではない。 |
| そういう問題ではないのだ。 |
| デパートのレストランが独立店舗になって大型化した |
| だけではないか。 |
| なぜ、頭にファミリーを付ける? |
| それは、レストランだ! |
| 外国から文化を輸入するのは、もちろん構わない。 |
| だから、ファミリーレストランという文化を輸入するのも、 |
| もちろん、構わない。 |
| だが、言葉まで輸入する必要など、どこにもない。 |
| 既に使用されている外来語を無視して、新たな外来語を |
| 導入する必要がどこにあるというのだ。 |
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| まぁ、良い。 |
| 既に定着している以上、それは良しとしよう。 |
| 問題は、「ファミレス言葉」だ。 |
| 聞いた話によると、注文を取り終わったところで、 |
| 「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」 |
| と言うのだそうだ。 |
| 意味が分からない。 |
| いくら日本語が乱れてきているとはいえ、そのような |
| 表現が実際に使われているとは、信じがたい。 |
| 恐らく、何かの誤りであろう。 |
| 誤りであろう、とは思うのだが・・・ |
| しかし、本当に使われているのであれば、それは見過ごす |
| 訳にはいかない。 |
| オーナーなり、店長なりに注意し、改めさせる必要がある。 |
| 従業員の教育は、使用者の責務に他ならない。 |
| そして、もし、使用者がそれに気づいていないのであれば、 |
| それを注意するのは、我々、利用者の責務である。 |
| 日本の文化、言葉の乱れを学校教育や政治のせいにし、 |
| ただ嘆くばかりでは何も変わらない。 |
| 自分の足元から改善していく努力こそが、大切なのだ。 |
| そう、私は考える。 |
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| だから、私は、ファミリーレストランに行くことにした。 |
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| 私が店内に入ると、ウェイトレスが近づいてきた。 |
| 「いらっしゃいませ! ・・・」 |
| 言葉の後、最敬礼になる。 |
| うむ。 |
| この店は、教育がゆきとどいているようだ。 |
| だが、問題はここではなく、注文を取・・・ |
| 「・・・ご主人様!」 |
| え? |
| ご主人様、と言った後、ウェイトレスは最敬礼どころか、 |
| 土下座になった。 |
| 「なんなりとお申し付けください、ご主人様!」 |
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| 教育どころか、調教がゆきとどいていた。 |